親との関係や介護に疲れを感じることは、決して珍しいことではない。しかし、それを口にするのはとても難しい。「親に尽くすのは当然」「育ててもらった恩がある」といった社会の価値観や自分自身の罪悪感が、正直な気持ちを押し込めてしまうからだ。
介護は肉体的な負担だけでなく、精神的な重荷にもなる。生活のリズムが制限され、自分の時間を持てない日々が続くと、心は次第にすり減っていく。また、親との関係性が過去から複雑である場合、介護の場面で未解決の感情が表に出てきてしまい、余計にしんどさが増すこともある。
「疲れた」と思う自分を責めてしまいがちだが、その感情は自然で正直なサインだ。人間には限界があり、支える側にも支えが必要である。周囲に相談したり、公的なサービスや地域の支援を利用することは、「親不孝」ではなく、自分と親の双方を守るための大切な選択だ。
介護は「一人で抱え込むべきもの」ではない。本来は社会全体で支えるべき営みであり、そこに「疲れ」を感じるのはむしろ当然のことだろう。だからこそ、自分の心身を守ることを後回しにせず、「休むこと」「助けを借りること」を肯定することが、長く介護を続けるための鍵になる。